
デジタル化が急速に進む現代社会では、単一の専門性だけでは解決できない複雑な課題が増えています。しかし、多くの大学教育では依然として縦割りの専門教育が中心で、領域を横断して学ぶ機会が限られています。京都芸術大学プロダクトデザイン学科クロステックデザインコースは、この課題に対して革新的なアプローチを提供します。
クロステックデザインコースは、日本で唯一、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ(BTC)の3領域を1年生から横断的に学べる教育プログラムです。企画力、デザイン力、テクノロジーを活用する力、そしてビジネスを形にする力を身につけることで、社会の複雑な課題を解決できる人材を育成します。シャープとの共同開発で生まれた「肩掛けプライベートAI」デバイスが『日経トレンディ』2025年ヒット予測で第1位に選ばれるなど、在学中から社会に大きなインパクトを与える成果を生み出しています。卒業後は起業、大手企業への就職、フリーランスなど多様な進路が広がり、「何色でもない」からこそ「何にでもなれる」可能性を秘めた、これからの時代に必要な教育プログラムです。
なぜ今、領域横断型の教育が必要なのか
現代社会が直面する課題は、技術の進歩とともに複雑化しています。例えば、新しいサービスを開発する際には、優れたアイデアだけでなく、それを実現する技術、持続可能なビジネスモデル、そして人の心を動かすデザインが必要です。しかし、従来の大学教育では、これらを統合的に学ぶ機会がほとんどありませんでした。
多くの高校生は、進路選択の際に「自分が何をしたいか分からない」「特定の分野に絞りきれない」という悩みを抱えています。一方で、社会に出ると、専門性だけでなく、異なる分野の知識を組み合わせて新しい価値を生み出す力が求められます。この教育と社会のギャップが、多くの若者にとって大きな壁となっています。
クロステックデザインコースは、この課題に正面から取り組みます。「まだ専門分野を決めきれていない」という状態を弱みではなく強みと捉え、幅広い分野を学びながら自分の進むべき道を見つけられる環境を提供しています。
3つの領域を横断するBTC教育の実践
クロステックデザインコースの最大の特徴は、ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの3領域を横断的に学ぶカリキュラムです。この教育アプローチにより、学生は単なる知識の習得を超えて、実践的な問題解決能力を身につけます。
1年生では、3領域の基礎を幅広く学びます。「サプライズ企画」の授業では、人の感情と行動を深く理解し、誰かを幸せにする企画を実践します。同時に、プログラミングや3D CADなどの技術、ビジネスモデルの基本も学びます。
2年生では、学んだ知識を実社会で活かす経験を積みます。特に注目すべきは「社会実装演習」で、学生たちが京都鴨川音楽祭を企画から実行まで担当します。会場確保、アーティスト交渉、チケット販売戦略など、イベント運営の全プロセスを経験することで、机上の理論を実践に移す力を養います。
3年生では、各自の興味に応じて専門性を深めながら、社会に向けたアウトプットを生み出します。4年生では、4年間で学んだ3領域を掛け合わせた卒業制作に取り組み、自分だけの新しい価値を創造します。
産学連携が生む実践的な学び
クロステックデザインコースは、企業との連携プロジェクトを通じて、実践的な学びの機会を豊富に提供しています。これらのプロジェクトは、学生にとって単なる演習ではなく、実際の社会課題に取り組む貴重な経験となっています。
シャープとの共同開発プロジェクトでは、「肩掛けプライベートAI」デバイスを開発し、『日経トレンディ』2025年ヒット予測で第1位に選ばれました。学生たちは、生成AIとの自然なコミュニケーションがどのような場面で必要とされるかを考え、サービス企画提案から実証実験まで携わりました。
UHA味覚糖との連携では、バレンタイン商品『特恋ミルク』を企画しました。「恋する女性の背中をそっと押す」というコンセプトで開発されたこの商品は、多くの共感を集め大ヒット商品となりました。在学中にこうした実績を積むことは、進路選択の際の強力な武器となります。
Airbnbとの産学連携プロジェクトでは、宿泊サービスに新しい価値を与えるアプリ開発に挑戦しました。学生チームが考案した「Runinto」は、場所の情報と訪れた人の気持ちを地図上に残すサービスで、記者発表会でプレゼンテーションも行いました。
AIバディと共に進化する学習環境
2024年度から、クロステックデザインコースは新たな挑戦を始めました。学生一人ひとりに専用のAIバディ(通称:Neighbuddy)を配布し、個別最適化された学習支援システムを導入したのです。この取り組みは、学内でもクロステックデザインコースが初めてで、株式会社miiboとの共同開発により実現しました。
AIバディは、1年生の専門科目「スタートアップ思考」で導入されています。配布当初は知識を持たない状態ですが、学生が授業内容をNotionのペアノートに記録し、Web UIを通じて対話を重ねることで、学生と共に成長していきます。学生は「教わったこと(事実)」「気づいたこと・学んだこと」「疑問に思ったこと・調べたいこと」を整理し、AIバディと対話することで理解を深めます。
特筆すべきは、最終課題として「AIバディによるレポート作成」が設定されている点です。これは、AIを単なる道具として使うのではなく、共に学習してきたパートナーとして活用する能力を評価するもので、AI時代に必要な「AIと共創する力」を育成します。
利用者の声を反映した機能改善も積極的に行われています。当初「LB(ラーニングバディ)」という固定名称だったものが、学生の要望により各自で名前をつけられるようになりました。今後は音声対話機能の追加も予定されており、より自然なコミュニケーションが可能になります。
多様なキャリアパスと卒業生の活躍
クロステックデザインコースの卒業生は、BTC人材として社会の様々な分野で活躍しています。進路の多様性は、このコースの大きな特徴の一つです。
例年、約1割の学生が大学院進学や留学を選択し、専門性をさらに深めています。約2割の学生は在学中に起業したり、フリーランスとして独立したりしています。残りの約7割は企業や自治体への就職を選択しますが、その職種は企画職、デザイン職、UIUXデザイナー、システムエンジニア、ビジネスコンサルタントなど多岐にわたります。
卒業生の小林輝さんは、在学中にAirbnbとの産学連携プロジェクトやARTIST FAIR KYOTOの運営アシスタントを経験し、現在は株式会社オレンジ・アンド・パートナーズで企画プロデューサーとして活躍しています。「何をするかじゃなくて、誰といるか」という気づきを大切に、好きなことを仕事に結びつけています。
山本真梨菜さんは、企画の授業で「人の心を動かす」ことの大切さを学び、現在はシャープの新規ヘルスケアプロジェクトチームでフェムテック事業や『bitescan』の商品企画に携わっています。「何色でもなかったからこそ、新しいチャレンジを広げていける」と語っています。
入学に必要なスキルと学習環境
クロステックデザインコースの大きな魅力の一つは、特別なスキルや経験がなくても挑戦できることです。文系の方も、プログラミングや美術を学んだ経験がない方も、このコースを目指すことができます。
重要なのは、新しいことに挑戦する意欲と、多様な価値観を受け入れる姿勢です。総合型選抜1期体験授業型では、体験授業に取り組む姿勢や意欲から能力や適性を評価します。技術的なスキルは入学後に基礎から学べるため、高校時代の専門性は問いません。
学習環境も充実しています。最新のデジタル機器を備えた制作スペース、企業との連携プロジェクトに参加できる機会、そして何より、様々な専門性を持つ教員陣のサポートがあります。起業家、アーティスト、マーケター、コミュニケーションクリエイターなど、各分野の第一線で活躍する教員が、学生一人ひとりの成長を支えます。
よくあるご質問
Q
プログラミングや美術の経験がなくても大丈夫ですか?
はい、大丈夫です。1年生では基礎から丁寧に学ぶカリキュラムが組まれています。実際に、多くの学生が未経験からスタートし、4年間で専門的なスキルを身につけています。
Q
どのような企業に就職できますか?
LINE、ヤフー、シャープなどの大手企業から、スタートアップ企業まで幅広い選択肢があります。企画職、デザイン職、エンジニア職など、学んだ3領域を活かせる様々な職種で活躍できます。
Q
在学中に起業することは可能ですか?
はい、可能です。実際に毎年約2割の学生が在学中に起業しています。教員のサポートや、ビジネスモデルを学ぶ授業など、起業を支援する環境が整っています。
Q
AIバディとは何ですか?どのように活用するのですか?
AIバディは学生一人ひとりに配布される学習支援AIです。授業内容の記録、対話による理解の深化、学習の振り返りなどに活用します。2024年度から導入された新しい取り組みで、AIと共に学ぶ力を養います。
Q
他のデザイン系コースとの違いは何ですか?
最大の違いは、デザインだけでなく、ビジネスとテクノロジーも同時に学べることです。これにより、アイデアを形にし、社会に実装するまでの全プロセスを理解できます。
Q
文系出身でも授業についていけますか?
はい、多くの文系出身者が活躍しています。技術的な内容も基礎から学べるようカリキュラムが設計されており、AIバディによる個別サポートも受けられます。
未来をデザインする第一歩を踏み出そう
クロステックデザインコースは、「まだ何をしたいか分からない」という不安を、「何にでもなれる」という可能性に変える場所です。企画×デザイン×テクノロジーの3領域を横断的に学ぶことで、これからの社会で必要とされる力を身につけることができます。在学中から企業との実践的なプロジェクトに参加し、2024年度からはAIバディと共に学ぶ新しい学習スタイルも導入されました。卒業後は起業、就職、フリーランスなど多様な道が開かれています。あなたも、未来をデザインする第一歩を、クロステックデザインコースで踏み出してみませんか。